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●高齢社会を安心してむかえるための諸対策

 

ところで、高齢社会が段々進んでくることに比例して同時に福祉に対するニーズも複雑・多様化してきます。これを全て行政が実施するには限界があります。また公的サービスだけではニーズが解消されるわけではありません。なぜなら、行政が行う市民サービスは公平性という性質が伴うからです。制度としてしかるべき手続きに基づいて実行され、市民に等しく普及され、実施されなければならないという使命があります。特定の市民だけに実施されることは許されません。更には財源的な制約が大きな問題です。財源は市民の貴重な税金が元になっていますので、おのずから限度があります。従って到達点のない目標までは行政によって全て処理出来ません。先程のアナ・ミヤレスさんの話に「ボランティア活動が行政の分野に入り込んで来るのではないか」ということがありましたが、私はそうではなく、むしろボランティアの方々が行政の埋められない谷間にもっともっと入りこんで助けていただかないと、守口市の場合は16万人の市民の皆さんの生活がより向上するということがないのではないかと思います。
高齢社会をむかえるにあたって、この2年間高齢者の介護をどうするかという問題で、厚生省の老人保健福祉審議会で論議がありました。私は66余の市長会代表としてただ1人審議会の委員に選出されておりましたが、2年間侃々諤々と意見がまとまりませんでした。なぜなら税金で全てを解決することは出来ないからです。しからばどうするのか、ということで保険制度にする。(これが国の方針であったわけですが)新聞で皆様方が見られるのは「高齢者介護保険」という言葉です。私は守口市のお年寄りの方々に機会ある毎にお尋ねしました。再々テレビに出るもので「市長頑張ってるな」と言われますが、「頑張っていますが、何をやっているのかお分かりですか」という質問をしますと「高齢者介護という保険証をくれるんやろ」とおっしゃるわけです。確かに保険ですから65歳以上になりましたら保険証をお渡ししますが、保険ですからお金を取られるわけです。その保険料を払うということは皆さんには行き渡っていないようで、その辺が大きな問題だと思います。私はこの2年間「そんな行き渡っていない制度を市町村は責任を持ってできませんよ」と頑張って言ってきました。また「国が集めた税金をもっと地方に下ろしてください、そして国民の皆さんが高齢社会をむかえても安心した生活ができるようにしたらどうですか」と言い続けて来ましたけれど、最終的にはうやむやになったきらいがあります。
実際に保険料を取られることになりますと、おそらく国民の皆さんは「そんなんではなかった。もっとバラ色の夢を与えてくれる保険証をくれることになっていたんとちがう?」となるのではないかと思います。物事を行うには絶対お金が必要です。財源を何処に求めるのか、お金で処理をするか、またはボランティア活動をしてお互い助け合って埋めるのか、このことを日本人はきっちり議論していかなければ、高齢社会を安心してむかえられないのではないかと思います。

 

●デンマーク・ドイツ・日本の福祉事情

 

96年の夏、ドイツとゲンマークへ視察に行ってきました。時間の関係であまり多くは

 

 

 

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